健常者とペア「力合わせ」
目の不自由な人たちと健常者が一緒になって、胆振東部地震の被災地でマッサージのボランティア活動を行っている。中心になっているのは、音楽デュオを組む佐久間信語さん(39)=札幌市=と、ほぼ全盲のあん摩マッサージ指圧師、柴田俊也さん(31)=同=。ボランティア団体「いっぽん」(札幌)を立ち上げて胆振管内の安平、むかわ、厚真3町などで定期的にマッサージの無料施術会を開き、被災者らの体をほぐしている。
いっぽんは、地震発生4日後の2018年9月10日から週1、2回のペースで現地入りし、これまでに施術会を約70回行ってきた。仮設住宅の談話室やお寺などを会場にして、被災者や支援者らにマッサージや足湯を提供。利用者は述べ約900人に上る。今年10月にマッサージを受けた厚真町災害ボランティア副センター長の山野下誠さん(48)は「体のケアをしてもらい、心もリフレッシュしました」と話す。
いっぽんのメンバーは現在約35人。マッサージ師は20人で、うち10人に視覚障害がある。
代表理事の佐久間さんと、理事の柴田さんは音楽がきっかけで知り合い、6年前に三味線とギターのユニット「テクニカルフィンガーズ」を結成した。佐久間さんは「三味線のしんちゃん」、鉄道好きの柴田さんは「ギターのてっちゃん」として、道内各地の催しに出向いてオリジナル曲を披露してきた。
佐久間さんはエアコン設備の仕事の傍ら、全国で相次ぐ自然災害の被災地でボランティアに参加。16年8月の台風水害では上川管内南富良野町の浸水住宅で、泥かきに汗を流した。柴田さんも一緒に現地入りし、ボランティアの人たちのマッサージを行った。柴田さんは「障害があっても他人を支援できる」と実感した。
昨年9月の胆振東部地震で、柴田さんは視覚障害のあるマッサージ師の仲間を誘い、現地に入った。仲間たちには「被災地ではかえって迷惑になるのではないか」との懸念もあったといい、不安を和らげるため、佐久間さんらは視覚障害者と健常者がペアを組んで活動する形を整え、活動を軌道に乗せた。視覚障害のあるメンバーは当初、柴田さんを含めて3人だったが、今は10人に増えた。
佐久間さんと柴田さんは音楽活動を休止して支援を行ってきた。柴田さんは1年以上に及ぶ活動を振り返り「支援を続けるうちに住民の方から『てっちゃん』と呼ばれるようになった」と喜ぶ。佐久間さんは「柴田さんはいつも前向き。自分にも、できることはもっとあると感じさせてくれる」と言う。
厚生労働省が16年に行った全国調査によると、ボランティアなど社会活動に取り組む障害者の割合は約2%。北星学園大の田中耕一郎教授(障害者福祉)は「共生の社会を築いていく上で、障害のある人が能力や経験を生かしてボランティアに参加する意義は大きい」と話す。
2人は被災地でのボランティアを続けながら、休止していた音楽活動を年明けに再開予定。「一人一人は小さくても、力を合わせれば大きな支援になる」という思いを、新曲で伝えるつもりだ。(北海道新聞 記者:五十嵐俊介)
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